リフォーム・リノベーション専門雑誌「プランドゥリフォーム」に掲載中のコラムのウェブ版です。
先日、おむすびや料理をのせる小ぶりの木製プレートの製作を見学しました。長方形にカットした栗の木の表面を、米粒のような丸い形に彫っていくのですが、丸ノミを使い、ひとつひとつ手で彫るという、見応えのある工程でした。ノミの刃先が木にすっと入れられ、すくうようにゴリッと彫ると、くるりと丸まった小さな木片が前方へ転がって落ちていきます。ノミは一定のリズムで動いて、小さな丸いくぼみが彫られていく様子はなんとも心地よく感じました。栗の木は、硬い木ですが、彫りやすいそうです。
栗の木は、昔から様々な暮らしの道具に利用されてきました。小さな器から大きな建物まで幅広く使われています。硬く、湿気に非常に強く、耐久性があるので橋や船、線路の枕木にも使われます。住宅の土台にも栗を使います。栗は、腐りにくく、シロアリなどの虫害にも強いので、防腐剤を使わなくても良いことになっています。防腐剤を使わずに土台に使用できる木は、栗のほか、ケヤキ、ヒノキ、ヒバがあります。
青森県にある三内丸山遺跡には約4500年前に建てられた直径1mの栗の木を使った大型掘立柱建物跡があります。土に埋まっていた部分は、外側を焼いて、建てられたそうで、今でも4500年前の栗の木の一部が残っていて、復元建物のそばの保存施設で見ることができます。
我が家では、ベランダの手摺を栗の木とヒノキでリフォームしました。東向きのベランダは、一年中、強い日差しと雨風にされされて冬は屋根からの雪とツララが落ちてくる過酷な環境ですが、木の状態は良好で取り付けた時のままです。外壁やベランダなど、外に木を使うときは、栗のように耐久性の高い木を選ぶと、塗装をこまめに塗りなおせば、かなり長持ちするそうです。
2年前にリフォームしたキッチンは、扉とワゴンを栗の木で作りました。完成当時は、明るい黄味がかった色だった栗は、少し濃い色に変化して、落ち着いた雰囲気になりました。栗が耐久性が高い理由は、タンニンが多く含まれているからだそうです。
タンニンは、黒くなる性質があるようです。築300年の蔵に使われている栗の木は、チョコレートのような濃い茶色に経年変化していました。
キッチンの扉も、いつの日か、チョコレート色に変化するのかと思うと、楽しみです。なるべく長く使って、経年変化を楽しみたいと思います。
作家・エッセイストの千石涼太郎さんのエッセイ
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