リフォーム・リノベーション専門雑誌「プランドゥリフォーム」に掲載中のコラムのウェブ版です。
無垢材の家具は、合板の家具に比べて、重いというイメージがありますが、片手でも持ち上げられるほど軽いスツールをみつけました。国産材だけで作られたそのスツールは、座面に桐を使っています。桐は日本の木材で、一番軽い木といわれています。
桐を使ったスツールは、軽くて持ち運びが楽なばかりではなく、クッション性があるので、座り心地がよいと、人気があるそうです。
桐は、柔らかい素材なので、傷がつきやすいと敬遠されることもありますが、ほかの木材と比べると、優れた特長を持っています。
桐は、アルカリ成分が強いので、虫が寄り付かないそうです。
桐にはタンニンという成分が含まれていて、天然の防腐剤の役割をしています。
無垢材は、湿度により収縮しますが、桐は、収縮しにくい素材です。桐の引き出しや箱物は、あけにくくなったりすることがほとんどないです。
桐は空気をたくさん含んだ構造をしているので、外側が熱い状態でも、内部まで熱くなりにくい性質があります。
万が一、火事になった時、桐箪笥は、外側が焦げても、すぐに中のモノまで焦げることがないそうです。燃えにくい性質を生かして、金庫の内側に桐を使っていることがあります。
桐の木の中心部には人差し指くらいの穴があいています。その穴は、上から下まで貫通しているわけではなく、所々、繋がっていないこともあります。
杉が家具や建物に使えるようになるには40年くらいかかり、楢は、80〜100年かかるのに対し、桐は15〜20年で成木になります。
桐は、これらの特長を活かし、古くから暮らしの中で利用されてきました。よく知られている桐箪笥や机の引出しのほかにも、使い道はたくさんあります。
果物や牛肉の贈答用箱・和菓子の箱・米びつ・火鉢・天井板・建具・照明など、数え上げると様々な場面で使用されています。
私の自宅では食器洗い乾燥機のドアパネルに桐が使われています。水回りで、毎日使う場所ですが、傷や収縮もなく、不便を感じることもありません。
リフォームして2年が経ち、色合いが落ち着いてきてよい雰囲気になりました。
桐は、成長が早く、短いサイクルで植林・伐採ができるので、CO2削減にも有効といわれています。
日本で一番軽い木は、特長を上手に取り入ると、環境にもやさしい心地よい暮らしができそうな気がします。
作家・エッセイストの千石涼太郎さんのエッセイ
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