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[ツゲのヘアブラシ]


ツゲの木が身近に感じるようになったのは最近のことです。大分県別府市にあるつげ工房でヘアブラシに出会ったことがきっかけでした。バッグに収まる携帯にも便利な小さなブラシで歯の部分に児島県産ツゲを使っています。ツゲの櫛やヘアブラシは制作工程の最後に椿油を染み込ませています。その為、髪をとかす時、静電気が起きにくく、髪に艶を与えます。頭皮の乾燥を防いで、木の適度な硬さはマッサージ効果があるそうです。櫛やヘアブラシのお手入れにも椿油を使います。椿油で汚れを浮かせて落とします。定期的なお手入れで長く使うことができます。


 
[ツゲの櫛]


ツゲと言えば「ツゲの櫛」が思い浮かびます。櫛は1枚の板から削りだされ繊細な技によってひとつひとつ手作りしています。継ぎ目のない一枚板のため、歯が折れてしまうと容易に修理はできないそうです。ヘアブラシは歯が損傷しても付け替えることができます。ツゲの櫛もヘアブラシも使えば使うほど艶が出てきて深みのある飴色に変わっていきます。


ツゲの櫛は一枚の板から削り出されます

ツゲの櫛は一枚の板から削り出されます


 
[滑らかさはトップクラス]


ホツゲの木は巨木にはなりません。高さ2~3メートルの常緑低木です。成長がとてもゆっくりで、樹齢100年のツゲの木でも幹の太さが10センチ程度しかない木もありました。成長が遅い分緻密で硬い木です。木肌の滑らかさは国産材の中でトップクラスと言われています。独特の粘りがあり、仕上がりが美しく自然な光沢が出ます。印鑑や帯留のような小さな彫刻や工芸品にも使われます。


 
[島ツゲと薩摩ツゲ]


ツゲの生育地は本州の宮城県・山形県より南のエリアです。中でも良材として知られているのは伊豆諸島の御蔵島と鹿児島県の指宿です。御蔵島のツゲは「島ツゲ」と呼ばれ、鹿児島県産のツゲは「薩摩ツゲ」と呼ばれて流通しています。島ツゲや薩摩ツゲは「本ツゲ」とも呼ばれています。


 
[ツゲの種類]


ツゲと呼ばれている植物はほかにもあります。島ツゲと薩摩ツゲはツゲ科ですがアカネ科の「シャムツゲ」モチノキ科の「イヌツゲ」などがあります。

シャムツゲ
アカネ科。主にタイ産。本ツゲの代替材として用いられています。本ツゲに似ていますが材質は劣ります。

イヌツゲ
モチノキ科。国産。葉の形などが本ツゲに似ていますが、葉の付き方が交互に付くので見分けがつきます。庭木の生垣などに使われます。


様々な木目の木を将棋駒の形に整えた島ツゲ

様々な木目の木を将棋駒の形に整えた島ツゲ


希少な目で揃えた島ツゲの最上級の将棋駒

希少な目で揃えた島ツゲの最上級の将棋駒


 
[将棋の駒]


ツゲの将棋の駒は最上級と言われています。繊細な彫刻が可能で仕上がりも良く、ツゲの中でも杢目が珍しい希少価値の高い虎斑や孔雀など杢を揃えた将棋の1セットは工芸品、美術品としての価値も高く高級品です。


 
[毎日使うものを選ぶ]


現在ではヘアブラシはプラスティック製が主流です。水にぬれても多少雑に扱ってもプラスティック製なら丈夫です。ツゲの木で手作りされたヘアブラシは使ってみると他の素材とは違う魅力があります。手になじむさらさらした感触や適度な弾力や硬さ、ぬくもりがここち良く心が落ち着きます。毎日使うもの、目にするものこそ自然の素材を取り入れると、いつもの日常が少し豊かに過ごせるように思います。


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