リフォーム・リノベーション専門雑誌「プランドゥリフォーム」に掲載中のコラムのウェブ版です。
朴の葉で、酢飯を包んだ岐阜県の郷土料理「朴葉寿司」。朴の葉は殺菌効果があるといわれていて、葉に包むことで手を汚さずに食べることができることもあり古くから携帯食として食べられていたそうです。岐阜県のほか奈良県、長野県でも朴葉寿司は親しまれていて酢飯の上にお好みの具材を並べたり、酢飯に混ぜ込んだり地域や家庭で様々な味が楽しめます。
「朴」と書いて「ホオ」と読みます。木材としては「ホオ」または「ホオノキ」と呼ばれることが多いようです。朴は北海道や九州など日本の広い範囲に生育しています。朴はモクレン科モクレン属の広葉樹です。木材としても古くから身近な道具や器の材料として使われています。
ホオノキの板は、心材はくすんだ深緑色で、辺材はややグレーに近い木の色をしています。ほかの木材と比べると木目が目立たず、色もおとなしくて素朴な雰囲気の木です。
ホオノキは広葉樹の中では軽い方に属しています。重すぎず、柔らかすぎず水切れも良いので、特にまな板に向いています。我が家ではキャンプに出かける時ホオノキは広葉樹の中では軽い方に属しています。重すぎず、柔らかすぎず水切れも良いので、特にまな板に向いています。我が家ではキャンプに出かける時な板の厚さは8ミリ前後と薄くてもほとんど反りません。野菜を切る時の音も心地よく、キャンプ場で鳥のさえずりを聞きながらホオノキのまな板で野菜を刻むのも気持ちの良いものです。ホオノキのまな板は20年の歳月が経ち、きれいな緑色の混じったグレーの木肌は白っぽい木の色に変わりました。
北海道では百人一首の筆文字で下の句が書かれている板かるたがあります。この板かるたはホオノキが使われます。手触りがよく、わずかに自然な光沢がある板かるたは道民なら一度は遊んだことがあるかと思います。子供の頃、工作の授業で作った木版画もホオノキが使われていることが多いです。ホオノキは歪みや、変形が生じにくいので、平らな状態が好ましいかるたや版画板に使われるのでしょう。ホオノキは調理道具にもよく使われています。ゴマを擦る時のすりこ木棒やそば打ちの麺棒にもホオノキが使われます。ほかにも包丁の柄材や小刀の柄もホオノキを使います。重箱にもホオノキは使われます。身近な場所で活躍する木ですが、最近はプラスチック製の道具が増えてしまいました。使い心地はやはり木製の方がぬくもりがあって手になじみ、使いやすいと思います。重箱のように塗装するものもありますが、ホオノキが使われる道具は無塗装が多いように思います。塗装していないと最後は土に帰せますし、本当の木の素材感を知ることができます。長く使い込んでいくと木材ならではの味わいも出てきます。身近な木材「ホオノキ」をこれからも愛着を持って長く使っていきたいと思います。
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