リフォーム・リノベーション専門雑誌「プランドゥリフォーム」に掲載中のコラムのウェブ版です。
ヒバは、スギやヒノキと同じ針葉樹です。主な産地は青森県で「青森ヒバ」と呼びます。他に能登半島に「能登ヒバ」別名「アテ」と呼ぶヒバがあります。
青森ヒバは、木曽ヒノキ、秋田スギと並んで日本三大美林のひとつです。青森ヒバの天然林はほとんどが国有林ですが、一般の方も利用できる森の施設が青森市と五所川原市の境にあります。眺望山自然休養林は、大正時代から大切に守られてきた青森ヒバの美林がうっそうと茂った天然の樹海になっています。山頂にはヒバの木より高い19mの展望台があり、陸奥湾や山々が見渡せ、風が吹くとヒバの香りに包まれます。
ヒバは、ダニやシロアリなど虫を寄せ付けない性質があります。家の土台にヒバは適材と言われていますし、ダニを寄せ付けないのでフローリングにも適しています。青森の職人さんは「昔から総ヒバ造りの家には3年は蚊も寄り付かないと言われている」と言っていました。釣り好きの知人はヒバで餌箱を作りましたが、木の餌箱は生きた餌が長持ちするのに、ヒバの餌箱に生きたイソメを入れたら死んでしまったそうです。
ヒバは香りが強い木です。その香りは、ヒノキチオールという成分が多いことで知られています。ヒノキにはほとんど無いヒノキチオールがヒバに多く含まれていてその成分には抗菌作用があります。ヒノキチオールは、クロコウジカビ、アオカビ、ペニシリウムなどのカビ類やMRSA、O─157、コレラ菌、結核菌に抗菌作用を発揮します。
寺社仏閣はヒノキのイメージが強いですが、丈夫なヒバの性質を生かして歴史的建造物にも多く使われています。青森県の弘前城や、岩手県の中尊寺金色堂、伊勢神宮(三重県)、伏見城(京都府)、出雲大社(島根県)、錦帯橋(山口県)、首里城(沖縄県)など、日本の各地でヒバが使われています。
16年前、青森ヒバでスノコと収納ボックスを作りました。ベランダにウッドデッキ風に置いて使っていました。戸建てに引越した時、そのスノコでコンポストを作りました。ふたを付けて底がない箱型のコンポストです。土と一緒に野菜くずや枯葉と米ぬかを入れると数週間で堆肥ができます。雨風に当たり、色は灰色になりましたがほとんど腐ることなく10年経った今も現役です。同じ頃スギでスノコを作りましたが、ヒバより早く劣化してしまいました。
ヒバの香りはスギともヒノキとも違う香りがします。アロマオイルも売っているほど人気です。しかし中にはヒバの香りは「泥臭い」という人もいます。内装やフローリングに使う時は、実際に香りを確かめることをおすすめします。家の中でも外でも使えて丈夫で抗菌作用もあるヒバ。ヒバの優れた性質を住まいにいかせば、体にも環境にも優しい暮らしができるように思います。
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