リフォーム・リノベーション専門雑誌「プランドゥリフォーム」に掲載中のコラムのウェブ版です。
ほかの木と比べると、桜材はやや硬めの材質で、木目が細かく、目が詰まっています。硬い割に、感触がよく、木のぬくもりが楽しめます。何より扱いが楽です。箸やスプーンのように使うたびに洗ったり水に触れることが多い木製品は、毛羽立ちやすいのですが、桜はほかの木に比べ、緻密で毛羽立ちが少なくて丈夫です。
木のカトラリーは、使う前にさっと水に通して、ふきんなどで拭いて使うとよいようです。使い前に濡らすことで、木の表面にバリアができて、汚れにくくなるそうです。箸、スプーンのほか、木の器やまな板も同じようにさっと水に通すと汚れや臭いが付くのを防げます。
「桜」というと、ソメイヨシノやシダレ桜など、お花見でおなじみの名前が浮かんできます。ソメイヨシノは園芸種だそうで、自然に生えているのは野生種といい、分類されます。木材の世界で、桜といえば、ヤマザクラやシウリザクラです。(ヤマザクラは、シロヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラなどの総称です。)
ヤマザクラは、山に自生している野生種の桜で、白や淡いピンク色の花を咲かせますが、オオヤマザクラは、ソメイヨシノより濃いピンク色の花が咲きます。
ヤマザクラは、箸やカトラリーなど小さなモノから、家具や内装材など幅広く使われています。流通量はそれほど多くはないそうですが、緻密な木肌で自然な光沢があり、色もよくきれいな木です。
7年ほど前に自宅をリフォームした際、対面式キッチンの間仕切りカウンターに桜材を取付けてもらいました。
それから毎日、桜材のカウンターと暮らしてきて、桜材は水回りにも向くと感じています。カウンターのキッチン側は、シンクがあります。皿を洗うたび水が飛び散り、当然、カウンターの上も水滴がつきます。マメに拭くのですが、時には自然乾燥するまで水滴がついたままの日もあります。今のところ、シミになることもなく、ほかの木材と比べるとずいぶん手入れが楽だと感じています。
カウンター天板に使った桜材は、以前住んでいたマンションで棚板として使っていました。長さ1・6mの一枚板で、奥行きは19㎝前後の耳付き材です。現在の家に引越した時、キッチンとダイニングルームの間の壁を取り、対面式にリフォームしました。その時に、マンションで棚板だった桜材を取付けてもらったのでした。同じ一枚の木を2つの住宅で使うことができたのは、この木が合板ではなく、無垢材だったことが大きいです。合板は切ったら切り口に何らかの手を加えなくてはならず、穴をあけることも時には難しいのです。無垢材は、その空間に合わせて切ったり削ったりができるので、古材を再利用できるのも、ほんものの木だからだと改めて感じます。
キッチンで一番、水や油が跳ね、頻繁に物を置く場所でありながら、特別な手入れをしなくても、気持ちよく使える桜材のカウンター。もしも、別の住宅に移り住むことになったとしたら、桜材だけは取り外して、新たな住まいに持っていくだろうと思うほど気に入っています。
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作家・エッセイストの千石涼太郎さんのエッセイ
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