リフォーム・リノベーション専門雑誌「プランドゥリフォーム」に掲載中のコラムのウェブ版です。
いつお邪魔しても「なんだか落ち着くなあ」と思う友人の家があります。その家は、ショールームのように生活感がないわけではなく、広い邸宅というわけでもない、ごく普通の家ですが、不思議とリラックスできて、木のぬくもりとセンスのよさを感じます。
一つひとつ、自分の目で選んだであろう、家具や雑貨は、どれもすてきです。家のあちこちに、木のぬくもりを感じる、ちょっとしたコーナーがあったり、ふと目にする場所に、こだわりが感じられて、印象に残ります。木の味わいと自然素材を生かしたオリジナリティが、家の要所にある心地よい家です。
例えば玄関は、靴を脱ぐときに、なにげなく視界に入る、無垢材の上り框。自然な形を生かした、少しカーブしているフチの部分が、目にとまります。木の優しい形と色が、不思議となごみます。
それほど広いスペースではない玄関でも、目線が行く所に、ちょっとした魅せ場があると、印象に残るもの。無垢材の上り框は、集成材などに比べると、高級感があり、空間が落ち着いた雰囲気になります。床材に無垢材を使うなら、上り框にも無垢材を。特に、耳付材を使って、フチの部分に「耳」を生かした上り框は、オリジナリティがあり、満足感の高い玄関になります。
耳付材とは、木の外皮部分の形を残した板のことです。木の外皮をはがして、外側の丸みのある形を残しつつ、表面を研磨して仕上げます。板にしたとき、外皮側の形が残っている部分を「耳」と言います。
「耳」は、木の自然な表情が楽しめて、味わいがあります。耳の形や状態は、同じものはなく、すべてが1点モノです。わずかに丸みがあるものや、大きく湾曲しているものもあります。耳の形を生かすと、ふたつとないオリジナルな空間がつくれます。
玄関の下駄箱も、天板を耳付材にするだけで、自然な雰囲気で、存在感のあるインテリアになります。節穴がある耳付材には、下に照明を取り付けて、ライトアップさせるなど、遊び心のある細工もできます。無垢材の特徴を生かすと印象的な玄関がつくれます。
玄関ホールや廊下の突き当たりは、寂しい空間になりがちですが、無垢材の飾り棚があると、落ち着いた雰囲気の魅せるコーナーになります。特に、変わった形の耳付材は、オリジナリティの高い空間がつくれます。飾り棚そのものにインパクトがあると、何も飾らなくても、絵になりますし、殺風景になりがちな廊下の突き当たりが、ぬくもりのある落ち着いた雰囲気になります。もちろん、好みの調度品や、季節の花などを飾るスペースとしても活躍します。
廊下の突き当たりを魅せるコーナーに
寂しくなりがちな、廊下の突き当たりに、飾り棚をつくりつけて、魅せるコーナーに。調度品や、季節の花を飾り、窓辺を演出。
トイレのような狭い空間は、少し手をかけるだけで、ずいぶん印象が変わります。効果的に木を取り入れられる場所のひとつが、手洗いカウンターです。カウンター天板を無垢材にすると、トイレ全体が木のぬくもりのある落ち着いた雰囲気になります。カウンターの下は、ペーパーの予備や掃除道具が入る収納棚をつくりつければ、見た目もすっきりとして、使い勝手もよくなります。
照明も、木を使ってカバーをつくり、間接照明にすると、柔らかな光の落ち着いた雰囲気のトイレになります。トイレの壁は、腰壁や塗り壁にすると、調湿効果が高まり、雰囲気だけではなく、空気感まで違って感じられます。 耳付材の中でも、変わった形の枝付きの木は、製材しにくく、その後の運搬や管理も手間がかかるので、あまり多くは出まわっていません。希少な素材ですが、自然の素材らしい野趣あふれる表情が楽しめます。
無垢材は、高級感があって、落ち着いた雰囲気を演出するには、とても優秀な素材です。特に、耳付材は、自然な味わいが感じられ、ニュアンスのある空間がつくれます。こだわりを持って、素材を選ぶと、家に一層の愛着がわきます。新建材にはない、「木のぬくもり」と、「質感」は、目に見える部分にこそ、吟味して取り入れたいものです。
自然素材が、トイレの空気感まで変えます
変わった形をしている楢の耳付材を使った手洗いカウンター。天板の下は、掃除用具や予備のペーパーを入れる収納をつくりつけています。壁は、珪藻土を手で塗り、間接照明は、槐の耳付材を取り付けています。調湿効果のある、木と珪藻土の壁は、空気感まで違います。
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作家・エッセイストの千石涼太郎さんのエッセイ
救急救命士で救急医療に従事したのち、カイロプラクティックを学び、開院した経緯をもつ院長が綴る健康コラム
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