リフォーム・リノベーション専門雑誌「プランドゥリフォーム」に掲載中のコラムのウェブ版です。
小学校入学をひかえたお子さんのために、木で造った学習机。北海道産のアサダを使っています。アサダは、硬く粘りもあり、傷つきにくい木。紅色の混ざった淡い褐色で、磨くとつややかな光沢があります。大人になっても使えるように、とてもシンプルなデザインです。引き出しは、机と別に造り、キャスターがついています。
この机は、お母さんが、研磨や塗装をして仕上げました。とても硬い木なので、磨くのにも時間がかかりますが、仕上がりは、自然な光沢が見事です。お子さんが幼稚園に行っている時間を利用して、数日かけて仕上げました。
赤味を帯びた色は、経年変化で徐々に色濃く変わっていきます。深みのある色になった頃、小学生のお子さんは成人されているでしょう。お母さんが造ってくれた学習机。大人になっても大切に使われるに違いありません。
家族みんなで造った胡桃の机。構造部分は、職人がひとつひとつパーツを造り、ホゾを彫って組んでいるので、とても丈夫。研磨と塗装は、休日を利用して、家族で行いました。まず、サンドペーパーで、表面をすべすべになるまで磨きます。天然面は、木のカーブに沿って、丁寧に磨いていきます。お子さんもできる作業なので、家族みんなで磨きます。
手で触ると、すべすべに変わっていく様子がわかります。磨いていると、木の香りが広がります。お子さんにとっても、親御さんにとっても、五感に伝わる感触や香りは、日常では体験できない貴重な時間です。
天板の裏側には、記念にサインを彫りました。大人になっても、家族で体験した、木の感触や香りは、ずっと記憶に残ることでしょう。
娘さんの結婚のお祝いに、お母さんが造った木彫りのチェスト。趣味の木彫りで、前板全面にバラを施した見事な胡桃のチェストです。胡桃は、適度な硬さとねばりがあり、狂いが少ないので、家具に適しており、木彫りにも向いています。構造部分は、職人が造りました。一番下の引き出しは、重い物を入れても楽に引き出せる、レールを取り付けています。
調度品としても見映えのする木彫りのチェスト。リビングルームに置いても引き立つ自慢の家具です。年月と共に、深みのある色へと変わっていくのも楽しみです。娘さんの幸せを願う気持ちがこもった素敵なチェストです。
どの家具にもそれぞれに想いがあり、末永く使い続けて欲しい気持ちが伝わります。単に、買うという行為より、想いをつなげることができるのは、造ることに参加したから。
ゼロから造るのは大変ですが、できるところは、やってみる。出来ないところは、プロにお願いする。という柔軟さが、他では手に入らない価値ある家具にしています。
ここで紹介したアサダや胡桃は、広葉樹。家具が造れるくらいに成長するには100年以上の年月が必要です。今、苗を植えたら、100年待たなければなりません。次の木が成長するまで、ずっと使えるように造ること。使うこと。造り手も使い手も、100年という歳月を意識したら、モノに対する気持ちが変わります。子供の成長を願う気持ちと一緒に、次の世代につなげるのは、モノへの愛情。自然界と、つながっているということも伝わるでしょう。
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作家・エッセイストの千石涼太郎さんのエッセイ
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